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写真は、日本を美しくする会 鍵山秀三郎相談役(正面左)、台湾を美しくする会 徐重仁会長(正面右)、京都市教育委員会 門川大作教育長(最右)、進行役は、日本を美しくする会 田中義人会長(最左)。正面に「凡事徹底」の置物(彫刻)。

巻頭座談会
第二回世界大会 in 台湾を終えて
 

六月三日に台湾で行われた第二回世界大会掃除実習後、鍵山秀三郎相談役をはじめ徐重仁会長、門川大作京都市教育長、田中義人会長が統一超商の本社に集い、「第二回世界大会in台湾を終えて」と題して座談会が行われました。
感動覚めやらぬ第二回世界大会の感想から今日に至るまでの活動の広がりを振り返り、さらにはこれからの掃除に学ぶ会に願うことをお話しいただきました。

「第二回世界大会を振り返って」
田中
第二回世界大会は門川教育長に講演をしていただきました。
この二日間の感想はいかがでしたか?

門川
まさに、感動、感動です。
講演では、鍵山相談役をはじめ、田中会長、京都掃除に学ぶ会の皆さんのご指導を得て学んだこと、京都で取り組んで来た道のりをお話しさせていただきました。
当初は、通訳を介しての講演は難しいのではと思っていましたが、通訳の方が心を込めて訳してくださったことと、会場いっぱいの方々が真剣に聞いてくださる姿に、志の高い方、また、実践を積んで来られた方が集まっておられることがひしひしと伝わって来ました。
また、昨晩の懇親会後、圓山大飯店の玄関で統一超商のスタッフの方々や通訳の学生ボランティアの方々が総出でわれわれ参加者を見送ってくださいましたが、これだけ大きくなられた会社にもかかわらず、素晴らしい一体感がありました。
それを見て、徐社長がこれまで積み上げてこられた偉大さに感じ入りました。
言うは易し、行うは難しですが、これをきっかけにして私も京都で地をはうようにこの活動を広めていきたいと思います。

田中
門川教育長がこれまで実践して来られたお話でしたから、会場に集まった参加者の方々も共感して聞き入っていましたね。
徐社長はいかがでしたか?


私も感銘をうけました。
教育は、社会のためにとても大切なことです。
特に、小学校や中学校の教育は、実践的なことを学ばなければいけません。
その実践の基本が掃除です。
小さな子どもでも掃除をする体験を通して考え方が変わる程、掃除は大事な教育の一つです。
門川教育長のような人がいらっしゃったら、台湾はかなり良くなるのにと痛感しました。
実は、掃除実習の会場だった士林小学校と中学校の校長先生は掃除の活動に対して非常に熱心で、ぜひこの活動の輪を学校から広げていきたいと思ってくださっています。
大会を盛り上げた合唱や演奏は、学校自らが提案してくださった演出です。
まさに、先生と子どもたち、そしてその親たちも一緒に参加し盛り上げてくださったのです。
門川教育長もお話をされましたが、まずは地域のために、そして子どもたちのために、これからは教育に的を絞って掃除の輪を広げていきたいです。
さらには今回、四つの大学から日本語学科の学生ボランティアが通訳のサポートをしてくれましたが、彼らにも日本語のみならず掃除に触れるいい機会になりました。

門川
その学生ボランティアの皆さんは、事前に鍵山相談役のDVD「掃除の道」を見て参加されていましたね。
映像を見た学生が、「映像の中の掃除をする子どもたちの笑顔は凄いですね。
やらされているのではない、内発的なものが笑顔に出ている」と話していました。


学生が事前に掃除の素晴らしさを理解すれば、通訳もし易いと思いましたし、日頃から、企業は事業で単に利益を追求するのではなく、学生や障害者支援、福祉活動などの社会還元事業も企業の大事な事業として、重点を置かなければならないと思っています。

田中
さらには、徐社長はいつも従業員を「舞台にあげる」とおっしゃいます。
従業員をいかに育てていくかも大切にしておられますね。


大学を出て仕事をするのは自分の生活を良くするためというのは基本的なことですが、企業と個人の関係はただ会社が給料を払い、個人も給料をもらうだけで安心というのではいけません。
企業と個人の関係はもっと深いのです。
お互いが一体感になっていい企業を作ろう、いい会社を作ったら個人もいい生活ができることを教えなければいけません。
われわれセブンイレブンは「家族」です。
経営者対社員ではなく、セブンイレブンファミリ—なのです。

門川
昔、私の父が「掃除をしている姿で、その人の器が分かる。お金の使い方を見れば、その人の値打ちが分かる」と言っていました。
お金の余裕ができた時に、そのお金をどう使うか。
また、なけなしのお金を自分よりも困っている人に差し出すことができるか。
徐社長のお話を聞いて、まさに統一超商のすばらしさを表している言葉だと思いました。

田中
さて、今回の世界大会には、ベトナム、中国、フィリピン、ブラジルなど、海外からの参加者もいらっしゃいましたね。


本大会には、延べ約一万三千人が参加しました。台湾全土のセブンイレブンは普段から店の回りを掃除し、トイレ掃除にも参加しており、現在、台湾には掃除に学ぶ会の支部が四十五ヶ所あります。
海外からは我々の企業がベトナムに旗揚げしたスーパーの副社長や、中国やフィリピンからもグループのパートナーが参加してくださいました。
こうして社内や関連企業からも掃除の輪を広げていきたいと思っています。

田中
台湾ではセブンイレブンがある地域は明るく安全になったと言われています。
店内だけではなくその周辺も掃除をされていることが都市を変える力になっていますね。
鍵山相談役はいかがでしたか?

鍵山
今回、私が何よりも嬉しかったのは、台湾と日本がまったく同じ次元で同じ精神を共有できたことです。
普通はなかなか思っていることや考えていることを共有するのは、たとえ同じ国の国民であっても難しいことです。
ところが、台湾と日本が昨日の講演会や懇親会、そして今日の掃除実習の実践を通して、同じ認識を同じレベルで共有できましたね。

もう一つは、徐社長が率いる統一超商グループさんが企業理念を実際の活動を通して見事に実現していることです。
企業は外に向けていろんないいことを言いますが、実際はそれが行われていた試しがありません。
言っていることと行っていることが、およそくい違っています。
徐社長は、当初、私が考えたことをその領域をはるかに超えて浸透し続けて来られました。
今回、三年ぶりに台湾に来ましたが、このことも何より嬉しい出来事でしたし、掃除という活動を通して、徐社長にご縁をいただいたことが誠にありがたいです。

田中
体験発表でも子どもたちの感想は素晴らしかったですね。

鍵山
実は体験発表の前からその素晴らしさを感じていました。
手の使い方や身のこなしを少しだけ指導すると、それを見事に受け入れてすぐにカタチになって表れる場面を方々で見ていましたから、体験発表の内容を聞いたときはうれしかったですね。
これも、実際にやっていることと、壇上で話していることが見事に一致している姿でした。
親も先生も一緒にいた、まさに大人と子どもがみんなで一体化していて、今日は見事でした。

門川
世代も住んでいる所も考え方も全て超越して、ただ便所を掃除させていただくことで一体感が生まれる。
京都でも、オーストラリアから帰って来た家族が、どうして柄のあるブラシで合理的に掃除をしないのかと思っていたが、やってみるとその考えが違っていることがわかったと聞いた時、トイレ掃除は普遍性があると感じました。
今回も実際に台湾に来て、いろんな国の参加者があらゆる違いをすべてトイレ掃除という実践で超えておられました。
そして、その時に出る言葉と笑顔が共通なのに驚きました。


子どもの教育は、教科書で教えることよりも、実際にやってみて子ども自身がこれは意味があると体感できることが最良だと思います。

門川
「聞いた事は忘れる。見た事は覚えてる。やった事は身に付く」まさに、これですね。
教育再生会議でも国会でも、トイレ掃除の実践の素晴らしさを伝えています。
道徳を強化するのはいいことだけど、教室で教えられる道徳はしれていますからと。

「これまでの活動を振り返って」
田中
徐社長が鍵山相談役に会われてから、今日にいたるまでの歩みをお聞かせください。


六年前に台湾で鍵山相談役夫妻にお会いしたとき、せっかく台湾に来られているので一番興味があるものは何かを知りたくて「ご趣味は何ですか」とお聞きしたら、鍵山相談役が「趣味は便所掃除です」と言われたのでとても不思議でしたが、そのときに掃除について詳しくお話をしてくださったので、これは台湾にとても必要、もしも、台湾で掃除の活動を広げられたら、きっと社会のためになると思いました。
そして、ちょうど我々の企業の二十五周年記念パーティーが予定されていたので、鍵山相談役にご講演をお願いしたらすぐにOKをいただけたのが、また嬉しかったですね。
講演の内容はトイレ掃除のことでした。トイレ掃除の映像を見てみんな驚きましたが、同時に感銘を受けました。
そして、台湾でも会を作ろうと決意をしたのです。

第一回の掃除の大会には、田中会長にご講演をいただきました。
トイレは環境にいいだけではなく企業にとっても大事で、古い機械でもメンテナンスをしっかりやれば、長持ちするというお話を聞いて、これは企業の経営にも役立つと思いました。
さらに、ありがたかったのは日本からのご支援です。
日本の皆さんのご支援がなければ、今の台湾掃除に学ぶ会はなかったと思います。

鍵山
世界の中でも、台湾と日本は心情的に一番近い国です。
日本でも台湾が好きという方は非常に多いし、台湾も日本が好きという方々が他国に比べて多いと思います。
ですから、大いに仲良くしたい。
そこで思うのは、台湾の国民性は非常に温和で誠実です。
ただ、一つ足りない所がある。
それは、几帳面さです。
これは、あまり几帳面にしなくても生きて来られた恵まれた自然条件が最大の原因といえるでしょう。

几帳面がいかに大切かというのは、ヘンリー・フォード一世が「成功の五条件」の筆頭に「几帳面であること」をあげています。
几帳面でなければ何をやっても成功しないとヘンリー・フォードは言っています。
私の父も几帳面の大切さを言葉ではなく、生涯を通して私に姿で教えてくれました。
この精神を台湾の方々が身につけたらこれほど素晴らしいことはないと思っていましたら、今回の大会で「この精神は相当速いスピードで浸透していく」と確信しました。
それが私の最大の喜びであり、また、さらに台湾と日本がより親密になってお互いに政治もイデオロギーも超えて、仲良くできる基になることも確信いたしました。

私自身は几帳面でもなんでもない。凡事徹底とはほど遠い、万事手抜かり。
しかし、社会に出ていろんな苦難に遭ったときに不思議といつも思い出すのは父の姿でした。
どんなときでも、あんなときはこうしていた、ああしていたという父の姿を思い出すのです。
それは全て几帳面である、凡事徹底の姿しか浮かんで来ませんでした。
会社ではいろんな苦難、災難など不運に襲われましたが、全て乗り越えて来たのはこの凡事徹底と几帳面につきるのです。
世の中、一生に不運や災難に遭わない人はいません。
その時に、あの手この手で二本しか無いのに、手が八本も十本もなければできないことを考えるのではなく、二本の手、二本の足でできることを実行していくことが間違いないのです。
掃除の道にも苦難はありましたがやっとこのごろ理解をしていただけるようになりましたね。

この活動の始まりは平成三年十一月二十三日、田中社長に会った日です。
私は自分の誕生日を忘れてもこの日だけは絶対に忘れません。
お互いに初対面でしたが、その日の夜に田中社長の家に招かれて、ポロッと一言、私が漏らした言葉から始まりました。
日本では何十年とかかりようやく活動も認知されるようになったことが、台湾では五年に短縮されたことは、徐社長の最大の理解者がいらっしゃったということですね。
ですから、これからの台湾の五年間はものすごい加速を見せると思います。

「これからの活動に願うこと」

鍵山先生が言われた通り、仕事をする精神は凡事徹底でないと成功できないことは確かです。
しかし、一般的に台湾に住む人は温かい国という環境のせいもあってのんびりしていて、あまり几帳面ではありません。
でも、私は我々の企業グループに常に凡事徹底のことを話しています。
凡事徹底の実践ができれば、必ずナンバーワンの企業になれる。
中途半端ではどうにもならないという精神を教えています。
仕事も掃除の会も同じです。
行ってはいても、どのように行っているか、几帳面に行われているかプロセスを見ないと途中でずれてしまいます。
これからも、台湾の掃除に学ぶ会はもっと日本から学ばなければいけないことがたくさんあります。
ぜひ、日本の皆様に応援していただきたいです。

それともう一つは、掃除の活動をどのように台湾全土に広げるかを考えたとき、学校教育、つまり子どもたちの教育から広げることが一番大事だと思っています。
チャンスがあれば、ぜひ京都や日本の各地域のいい事例を学びたいです。
日本での経験やノウハウを台湾でも行うことができればありがたいですね。

田中
企業は社会的な責任の中で、いいお父さんお母さんを作っていく事も大きな位置を占めていますね。


台湾では学歴が重要視されています。
でも、私は学歴よりもしつけで礼儀正しさを教える家庭の教育が非常に大事だと強調しています。
ただ学校に行かせるのではなく、親子が一緒に教育を考えないと意味がありません。
それを親に理解してもらうためにも、子どもと一緒にいい活動をやるのが一番いいと思います。

門川
企業は社員がモチベーションを高めて仕事ができるのが一番大事。
でも、社員の一番の悩みの種は、子どもの教育ですからね。
掃除の可能性は大きいわけです。
教育は、体験をしながら、子どもと親、先生、地域が和気あいあいと一緒にやっていくしかありません。
ワーク ライフ バランス(働くことと私生活)、ワーク エデュケイション バランス(働くことと教育)、ワーク パブリック バランス(働くことと公)といって、今までは、働くことと私生活のバランスが言われていましたが、これからは、働くことと同時にいかに学校へ行って教育に関わるか、さらには、いかに地域社会のためになるかを考えることが大事です。
従業員が学校へ行く。
教育に関わる。
自分の子どもの事だけではなくPTAになって学校にどんどん出入りする。
PTAの会員として先生と一緒に掃除をしようと言えばどんどん掃除の活動が学校に広がるでしょう。
京都では初めはなかなか学校に入れませんでしたが、PTAの立場から広げてくださいました。
組織から組織ではなく、従業員さんが親となり、地域住民となって掃除の輪を広げていくのが一番早いですね。
学校や子どもを中心にして、子どもたちをどう育てるのか、環境をどう作るのかということを親も先生も地域住民も一緒になって取り組む。
子どもは夫婦のかすがいであり、地域のかすがいでもあるのですから、子どもたちのために、子どもたちと一緒にやれる雰囲気が活動に出てくればいいですね。

鍵山
今日の素晴らしい体験発表に到達するまでに我々日本は何年かかりましたか?
でも、実際に台湾は五年でその領域にこられましたね。
今までは、活動をいかに普及するかというスピードを重視してきましたが、これからはスピードをダウンして真実を伝えていくことにシフトしていかなければいけません。
つまり、掃除を通して学んだいろんな知恵をいい事に使う、いい方向に使うようにしていかなければいけないのです。
知恵は道具と同じで、使い方によっては凶器にもなります。
ですから、これからは門川教育長が言われたように、エデュケイション(教育)からパブリック(公衆)へ芯から向けて、エネルギーを注いでいきたいと思います。

ローマ帝国の「ローマ人の物語」には、ローマ帝国が繁栄していた間は、ローマ人はプブリカ(パブリックの語源)といって公を最重点課題にし、非常にエネルギーがあって鎮圧した地域の政治までも比較的おさまっていたと書かれています。
しかし、富を集めてみんなが勝手なことを言い始めると、たちまち衰退し滅びたというわけです。いかに、このプブリカが大事かということです。
この掃除に学ぶ会の運動がずっとパブリックの方向へ向かっていただくことを願っています。

田中
日本では、あれだけ治安のよくなかった新宿歌舞伎町で街頭清掃が定着し、それが名古屋や関西へと飛び火しました。
わずかな人が始めた事が全国へ広がりをみせているのです。
このように、いい活動がベースとなって、地域の条例にも生かされていく時代が訪れそうですね。

本日はありがとうございました。