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清風掃々第18号 平成22年11月発行
8月8日(日)開催の「第3回長野県中学校サミット」より
講話「寛容の心」

「人間は科学の力によって何でも可能になったが、ただ一つだけ、寛容になれなかった」(ドイツの作家ギュンター・グラス「女ねずみ」より)。
本当にその通りだと思います。

残念ながら「寛容」というものが失われたために様々な犯罪が起きるようにもなりました。
自分の子どもを餓死させたり、虐待して殺したり。
とても人間とは思えません。
どんなに貧しくても昔だったらそんなことはできませんでした。
猫や犬でさえ我が子を守っているのに、人間が自分の子どもを虐待して殺すなんて考えられないことです。
その元はすべて、人間から「寛容の心」が失われたということにあります。
このことを私は昔から非常に心配していました。
その心配以上に世の中が悪くなってしまいました。

私が心から願っているのは、「日本を美しくする会」の活動を通して、人々の心に「寛容の心」を取り戻したいということです。
私が見る限り、「日本を美しくする会」にしかできない、と確信しています。
そこで、各地の「掃除に学ぶ会」の活動に参加して気がついたことを皆さんにお伝えさせていただきます。

まずは、「寛容の精神」で受けとめていただきたいということです。
運営の仕方についてこうしなければいけない、と制約のようなものが出てくるようですが、そうではなく「寛容の精神」で、初めて来た人が意外な行為をしていても、それを否定しないでいただきたいのです。
未熟故に知らずに起こしたことは笑って済ませ、「そんなことをしてはダメだ」とおっしゃらないようにお願いしたいのです。

大正村で第一回日本を美しくする会を始めたときはたいした道具もありませんでした。
みんな初めての人ばかりでしたから、何をするのかもよくわからないまま来た人もいました。
しかし、終わった後、皆さんが本当に感動して、「よくやった」「来てみて本当に良かった」という声が大半でした。
それがまた次に繋がったわけです。
「掃除に学ぶ会」は、できればその初期のような感動がある会でありたいです。
「来て良かった」「次も来たい」「次はいつありますか」「どこでありますか」、そんな会であっていただきたいのです。

反対に時間だけはきっちりと守っていただきたいです。
特にお願いしたいことは、朝、リーダーさんが説明や注意事項をお話しするとき、長いところは二十分以上経ってもまだやっています。
他の班はどんどん掃除しているのにまだ説明や自己紹介したりということが現実にあります。
現場で長い時間を費やしますと、やる気がだんだんと失せていってしまいます。
ですから、現場に行ったときの説明はごく簡単にスポンジとたわしとカネヨンとサンドメッシュの使い方ぐらいで、後はやりながら道具の説明をしていきましょう。
自己紹介も十五人もいるところでは、あまり意味がありません。

また、終了時間が近づき、道具の整理に入る時間になったのに、あるチームだけ掃除を続けているということもあります。
まだ汚れが取れていないからと言われますが、そのチーム一つが遅れたために、感想発表や会全体の時間もずれてしまいます。
まだ完全ではなくても時間が来たら、清掃を止めてクロージングに持っていく。
決められた時間に決められた場所に道具を置き、集まって昼食、体験発表に移るようにしていただきたいのです。
どうしても完璧に終わらせなければ気が済まないという方がいらっしゃると全体に迷惑をかけてしまうことになります。

また、全班が体験発表するために大変な時間が要ります。
班が多いときには、奇数班に絞るとか、十人だけ選んでやるとか、とにかく決められた時間に終了できるよう、責任者の方には取りはからっていただきたいと特にお願いをいたします。

また順番や手順については、DVDは一つの参考であって、その場の状況に合せて臨機応変に行なうことも必要です。
活動を通して「寛容の心」を学んでいくということがとても大切だと思います。