清風掃々第29号 平成29年6月発行
巻頭言 動中の工夫
今の人は自分の目でものを見ず、足を動かさず、すべてを机上で考えようとします。
商品にしてもデータで何でも管理して、わかった気になっています。
ですが、本当にそれでいいのでしょうか。
私は時間があると、自分の会社の物流センターへよく足を運んでいました。
それにはいくつかの理由がありました。
商品が売れると、それだけ空き箱が出てきます。
そのままだと後から来る人が商品を取りにくいから、空き箱をこまめに潰して通路をいつもきれいにするわけです。
すると、よく空き箱の出る商品というのがわかります。
人気があるから空き箱が出るのだろうと、その商品を大量発注したところ、やはり大変な売り上げにつながったのです。
現場に足を運んだからこそ、売れ筋の商品が見えてきたのです。
また、私はよく店に出向き、たびたび掃除をしていました。
すると店のレジの女性にも挨拶がてら声をかけます。
すると彼女が「今○○が売れているんですよ」と教えてくれました。
それでまた別の機会にも店に行くと、彼女がまた手招きをして、別の売れ筋を教えてくれるのです。
その商品を大量発注したら、これも大ヒット。
現場で生の声を聴いたからでしょう。
掃除のときも同じことが言えます。
たとえば掃除をしていて、少し先の植え込み付近に吸い殻を見つけます。
それを敢えて拾いに行くと、植え込みの下でペットボトルや缶を見つけることが度々あるのです。
こんなふうに、現場で行動しているからこそ思わぬ出会いがあったり、アイデアが思いついたりするのです。
これはビジネスや掃除に限らず、何にでも応用できることです。
ただパソコンの前でさまざまなデータをチェックしているだけではなく、行動しながら考えるからこそ活きた考えが湧いてきます。
まさに、白隠禅師が言うところの「動中の工夫は静中に勝ること百千億倍」なのです。
重要なのは、「まず行動をする」ということ。
これは、江戸時代の薩摩藩、
島津家に伝わるとされる教えです。
常日頃、鍵山氏の指針となっています。
『薩摩の教え』 男の順序
一、何かに挑戦し、成功した者
二、何かに挑戦し、失敗した者
三、自ら挑戦しなかったが、挑戦した人の手助けをした者
四、何もしなかった者
五、何もせず批判だけしている者