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清風掃々第21号 平成24年11月発行
巻頭言
二十年、俯仰天地に愧じず(ふぎょうてんちにはじず)
 

己れを愛するは
善からぬことの第一なり。

これは西郷隆盛の遺した教えで、私の好きな言葉でもあります。
自分だけを大切にするのは、一番良くない事であるという教えです。
現代の人々は何事も自分第一で進めるように変わってしまいました。
人は、自分ではない何かを守ろうとした時に強くなれる生き物ですから、利己主義になれば弱体化するのは当然です。
私達の実践する掃除は現代の風潮と異なり、費用はすべて自分たちで負担し、社会、学校、そしてこれからの日本を担う子どもたちを守るために行うものです。
損得勘定をしていたら到底継続できません。

こうした掃除によって得られる価値観が世界に浸透すれば、今の「人が人を犠牲にする社会」を根源から変え、本当の意味でのユートピアを作れると考えています。
この二十年はそのための土台が作られた二十年だったと言えるでしょう。

本会が立ちあがってから今までは、水面下で懸命にもがいている期間でしたが、皆様の努力が実を結び様々な場所で掃除の効果があらわれたおかげで、やっと水面から首が出たように感じられます。
現代は自らの労働によって富を得るのではなく、お金を働かせることによって得る時代になりました。
これはとっても危険な風潮です。

千葉県立市原特別支援学校つるまい風の丘分校では、障がいを持った生徒と共に徹底した掃除を金山先生(印旛掃除に学ぶ会)が行ったところ、それまでうつむいていた生徒が、凛と上を向いてしっかり話すようになるという驚くべき効果を見ることができました。
また、スポーツの世界では、ずっと関西学生サッカーリーグ二部だった神戸国際大学の例があります。
このサッカー部監督の廣田景一先生(大阪便教会)が学生たちと一緒に掃除をし続けた結果、そのサッカーチームは一部に昇格しました。

こうした活動を二十年続けてこられた本会の皆様は、堂々と胸を張って生きておられる方々です。
「俯仰天地に愧じず」という言葉がまさに合うと私は思います。
天地どこから見ても皆様には愧じるところがありません。
これからもやってきたことを驕らず、謙虚に、真の意味で人と社会の役に立つ存在であり続けていただきたいと思います。
社会の認知が高まり、やっと「普通」のテーブルに乗った今からは、やりたいこと、やれることが次々と降って湧いてくるのではないか。
そんな気がしています。